2013年6月2日日曜日

ひきこもり発生のプロセス(5)子どもを愛せない母親

K子さんはL男がうっとおしかった。そして、自分の子どもを可愛いくないと思うのはショックだった。私はダメな母親、そんな親は世間にいないと、密かに自分を責めた。

しかし、子どもを愛せない問題は人には相談できない。(子どもの首を絞めた事件は記憶から消えていた)一人で子育てにイライラするだけである・・・

K子さんにとって子育てとは、母としての役割りを果たすことである。L男に食べさせなければいけない、着せなければいけない、騒がないようにしなければいけない、寝かせなければいけないと頑張った。

必死に頑張るK子さん。だからこそ、L男がはしゃいだり、泣いたり、ワガママを言うのがうっとおしい。自分がこんなに一生懸命やっているのに、赤ちゃんのL男はK子さんの気持ちが分からない。K子さんはそんなL男に無性に腹がたった。子どもは自分に優しくしてくれると期待していたのだ・・・



子どもを愛せない親からの手紙 (角川文庫)
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K子さんにとって子どもはワケの分からないものである。子どもが思い通り動かないとイライラする。子どもは大人しくしていればいい、私の言う事を聞けばいい、騒ぐんじゃない、ジッとしてなさいと言いたかった。特に、L男が甘えるとイライラする。私にメイワクをかけないでと叫びたくなる・・・

K子さんには子どもが自分を幸せにする淡い期待があった。何かが変わると思った。しかし、子どもが生まれると大変なだけだった。お金はかかるし、夫は気難しいし、アテにはならない。夫は子育てが妻の役目だと思っている。育児には協力しない。K子さんは夫には何を言っても通じないと諦めていた。

誰かに理解してほしい。でも、私には味方がいない・・・

「あんな男を好きになれない」と思うが、子どもがいるから離婚はできない。別れたら暮らせないし、親に頼れないK子さんは他に行く所がない。選択肢が無いので結婚生活にガマンするしかなかった。

K子さんは自分を羽のない鳥のように感じた。飛べないからここにいるしかない。それは自由を奪われた者の惨めさである・・・

L男が邪魔だと思った時、K子さんは初めて、子どもを殺して無理心中する母親の気持を理解することができた・・・