2012年9月30日日曜日

潜在的ひきこもり(5)グループセラピー

今年から、自分を取り戻したクライアントだけを集めて、グループセラピーを始めた。今回は二回目。ほとんどがカウンセリングを二年以上受けており、自分の考えを自由に表現できる人たちである。





グループセラピーでは母親の問題が自然に話題となる。母の側にいて苦しかった、母が恐かったなど、母に甘えられなかった子ども時代を語る。しかし、そのレベルまで理解してないクライアントは、母の問題を聞くのがとても辛い。





自分の気持ちが分からない、何のために生きるか分からない、外の世界がいつも恐かったとつぶやく人たち。母に愛されなかった人たちが、静かに涙を流しながら、初めて、「自分は一人ではない」と感じる。





ひきこもりは母親から子どもに連鎖する病気である。グループセラピーでは母親が子どもを拒絶するトラウマがはっきりと見えてくる。



2012年9月26日水曜日

潜在的ひきこもり(4)父親について

潜在的ひきこもりの多くは父親について語らない。この傾向は社会的ひきこもりも同じである。クライアントは母親について話すのに、なぜ、父親について語らないのか?

クライアントの父親のイメージはふつう、「自分には関係ない人」、「夜遅く帰ってくる同居人」、「何を考えているか分からない人」、あるいは「突然怒りだす恐い人」である。


ひきこもり家庭の父親の姿は、健康な家庭と比較すると見えてくる。



父と母は子どもに関心を払っている


健康な家庭の父親は子育てに参加する。子育ては夫婦の共同作業である。


父と関わりを持つ子ども


子どもは父親とコミュニケーションを持っており、父親は子どもに関心を払っている。両親とコミュニケーションを持てる子どもは親の保護を感じることができる。



父も母も子どもを見ていない。


しかし、ひきこもり家庭の父親は育児に参加しないで、子育ては妻の役目だと思いこんでいる。父親は仕事中毒で、家に帰るのが遅く、妻と子どもとコミュニケーションを持たない。

母親は、一人で育児をするだけでなく、子どもを受入れられない問題を抱えている(ひきこもり家庭の母親は専業主婦が多い)。



父と関わりのない子ども



母に甘えられない子どもは父親を求めるが、しかし、父親は子どもと向き合うことができない。

日本では子どもは父親の背中を見て育つというが、それは父子のコミュニケーションが無いという意味である。

親に頼れない子どもは、やがて感情がマヒして、父親にも母親にも心が閉じてしまう。


親とつながりがある子供(左)、親とつながりがない子供(右)


ひきこもり家庭の父親は会社や仕事と結婚している人が多いが、クライアントはそんな父を見て、「自分には関係ない人」と感じるのである。



2012年9月17日月曜日

富士山に登る

9月2日に帰国してから2週間目、16日の日曜日に念願の富士山に登った。実は、これ、曰く付きの富士登山である。

昨年の9月末、私は友人2人と登ったが、8合目で高山病になり下山した。高校時代から山が好きだった私が頂上まで登れないのは初めてだった。高山病で体が動かなくなると初めて知った。今年はそのリベンジを狙って一人で登ることにしたのである。






5合目から見える富士山


前日の土曜日の夜、5合目の吉田口駐車場で車中泊したのは、2300メートルの高地に体を慣れさせるためである。
高山病の対策は高地順応が大切と聞いていたからだ。





日曜日の朝に出発。駐車場の近くに観光客を運ぶ馬が並んでいるが、なんとなく悲しそうな顔に見えた。人間に可愛がられることもなく、道具として使われる人生、そんな悲運を嘆いていると感じたのは、私の独りよがりの感傷だったろうか。











吉田口の登山道から入る。7合目に着くと、富士山は岩場ばかりの山となる。どこにも木がない。まるで月の斜面のようだ。森が好きな私は、なぜこんなガレキの山に登るのかと、ぶつぶつ言いながら岩場を登る。








6合目


高度順応するために時間をかけて登ること、頭痛がしたら休むこと、心拍数を上げないようの歩くのが高山病にならないコツである。




7合目


急にガスがかかった鎖場



岩場を登る人たち

やっと8合目の富士山ホテルに着いた。二段ベットに寝袋が並べてあるのでホテルとは名ばかりである。しかし、富士山の山小屋はどこも同じ。どの山小屋も狭い斜面にしがみつくように建てられている。




二段ベット


ベットで横になると軽い頭痛に気がついた。高山病の症状である。自分だけかと思ったら「頭が痛い」とつぶやく人がいた。下の食堂に降りると青い顔した女性がベンチで横になっており、介護する男性は不安そうに、「二階は空気が薄いから下で休んでいるんです」と言う。高度は3360メートル。確かに空気は薄いのである。


明日は御来光を見るために頂上まで行くつもりだった。頂上までの高度差は300メートル。歩くと一時間半はかかる。軽い高山病なのに登れるかしらと考えていると、夜になって降った雨は暴風雨になった。台風16号の影響である。



富士山ホテル食堂、午前2時半

こんな暗くなっても下から登ってくる登山客たちがいるのは驚いた。彼らはびしょぬれになっていたが、山小屋は宿泊客が一杯という理由で中に入れなかった(実際、小屋は満員だった)。山小屋の前でふるえる登山客を見ていると、私たち宿泊客は誰もが悪天候を心配し始めていた。

夜中の2時半には宿泊客が食堂に降りて来た。ホテル側の説明を聞くと、頂上は風と雨が強くて危険、気温は氷点下に近いという。頂上の山小屋である富士館は、9月1日に終了しており、山頂には避難場所もトイレもなかった。

やがて、二つのツアーグループは登山中止を決定、個人の登山客たちも頂上で御来光を見るのを諦めた。私も、無理して登ることはないと、下山することにした。後で知ったのだが、頂上は雪が降っていたそうである。

朝になると、雨は弱まったが、風は強かった。頂上の御来光は見れなかったが、8合目の山小屋の前に太陽が顔を出してくれた。


富士山ホテル前のご来光





本8合目には富士山ホテルの他に、御来光館、胸突江戸屋、トモエ館などの山小屋があるが、どの登山客も同じである。朝食を終えると一斉に下山した。


下に雲が見える8合目


写真を取る下山者たち


登山道は岩場だったが下山道はブルドーザー用の道である。岩場と違ってすたすたと歩ける。去年もそうだったが、下に降りると高山病は急に楽になり、体力が戻ってくる。

途中で荷揚げ用のブルドーザーとすれ違う。今日から富士山の7合目以上のトイレは閉鎖、山小屋はほとんど営業を終了する。一般登山はこれで終りである。富士山はこれから厳しい冬に入るのである。






本八合目3360メートルまでの登りは7時間半、下山はわずか2時間半という奇妙な富士登山だった。今回も頂上には登れなかった。しかし、来年はリベンジを諦めることにした。

富士山は遠くから眺めるのが一番いい。それが今回の結論である。

教訓。9月の富士登山はGORETEXのレインスーツ上下は不可欠。防寒具だけではずぶぬれになる。山小屋泊は予約が必要。悪天候でも泊めてくれない場合がある。




2012年9月10日月曜日

潜在的ひきこもり(3)表の自分とウラの自分

社会的ひきこもりも、潜在的ひきこもりも、二つの自分があり、セラピーが進むと「話せない自分」が出てくると説明した。なぜこんな現象が生まれるかを説明しよう。

以下は健康な母子関係である。母が受入れるので、赤ちゃんは安心して甘えることができる。赤ちゃんは親に何でも言える子どもとなり、やがて自分の考えや気持ちを表現できる大人に成長する。つまり、他人と親しく関われる大人となる。



赤ちゃんを受入れる母親


母に何でも言える子どもに成長する


人とコミュニケーションできる大人に成長する


以下はひきこもりの母子関係である。母親が自分の親に受入れてもらった体験がないので、自分の子供を受入れることができず、赤ちゃんは甘えることができない。

母に安心できない赤ちゃんは生き残りのために二つのことを実行する。一つは母に合わせる表の自分を作ること、もう一つは母に嫌われないために本当の自分(ウラの自分)を隠すことである。


赤ちゃんを受入れられない母親


母に合わせる表の自分をつくる


母に合わせる赤ちゃんは手のかからない良い子(表の自分)になるが、同時に、本当の自分は母から隠れている。ひきこもりの二つの自分はこうして作られる。



本当の自分は隠れている



この子が成長すると、人と親しくなれない潜在的ひきこもりとなる。表の自分はニコニコしているが、ウラの自分は自分を見せると嫌われると緊張している。コミュニケーションできない問題は母子関係から始まる。



相手に合わせる人間関係、本当の自分は人を恐れている



ひきこもりセラピーでは母から隠れたウラの自分が出てくるが、その子が「話せない自分」である。何も言えないのは、母親(最初の人間)と絆がないままに成長が止まったからである。話せない自分は守る人がいないので外の世界は危険だと思っている。



話せない自分とセラピスト



このメカニズムが分かると潜在的ひきこもりがなぜ以下の問題をもつのかを理解できる。

  • 二つの自分(表とウラの自分)がある。
  • 本音を言うと人に嫌われる、あるいは人間関係が壊れると思い込んでいる。
  • 自己表現をうまくできずに対人関係で緊張する。
  • 自分を殺して人に合わせるクセがある(人に嫌われるのが恐い)
  • 物事を決められない(外の世界や新しい体験を怖がる)。

ひきこもりは母に受入れてもらえないために発生する病気である。社会的ひきこもりも、潜在的ひきこもりも、すべてのクライアントは母の絆のトラウマをもっている。



健康な母子関係(左)、ひきこもりの母子関係(右)


ひきこもりは母から子どもに連鎖する病気である。子どもを受入れられない母親は、実は、自分自身も親から拒絶されたトラウマがある。



2012年9月9日日曜日

シャバラムパーク(ハシエンダハイツ)

ハシエンダ・ハイツはロサンゼルスの東25マイルに位置するコミュニティである。人口は約54000人。富裕なアジア系移民の街として知られており、ラテン系と中国系の住民が多い。


街の中心にはシャバラムパークがある。住民の憩いの場として人気があり、犬をつれて散歩する人達や、公園を囲む山をジョギングする若者をよく見かける。


Ray's Schabarum Regional Park
www.hacienda-heights.net/


早朝は中国人のグループがいつもダンスの練習をしている。彼らは日本人と似ているのだろうか、グループで行動するのが好きなようである。







公園の奥まで歩くと小さな牧場があって馬が飼育されている。写真は馬でひく農業用トラクター。ハシエンダハイツは昔はオレンジ畑ばかりの土地であった。木陰の道を抜けると丘の上からハシエンダの街が見える。






File:Hsilai surrounding.jpg


下に降りるとPANERA BREADがある。くつろげる室内、おいしい自家製のパン、おかわり自由のコーヒーなど、最近はスターバックスよりも人気があるので、日本に進出するかもしれない。週末の休みを楽しもうとサイクリング仲間が集まっていた。




ホーランドもそうだが、ここは時間がゆっくりと流れている。皆、自分のペースで生きていていいなぁと思う。