社会的ひきこもりも、潜在的ひきこもりも、二つの自分があり、セラピーが進むと「話せない自分」が出てくると説明した。なぜこんな現象が生まれるかを説明しよう。
以下は健康な母子関係である。母が受入れるので、赤ちゃんは安心して甘えることができる。赤ちゃんは親に何でも言える子どもとなり、やがて自分の考えや気持ちを表現できる大人に成長する。つまり、他人と親しく関われる大人となる。
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赤ちゃんを受入れる母親 |
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母に何でも言える子どもに成長する |
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人とコミュニケーションできる大人に成長する |
以下はひきこもりの母子関係である。母親が自分の親に受入れてもらった体験がないので、自分の子供を受入れることができず、赤ちゃんは甘えることができない。
母に安心できない赤ちゃんは生き残りのために二つのことを実行する。一つは母に合わせる表の自分を作ること、もう一つは母に嫌われないために本当の自分(ウラの自分)を隠すことである。
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赤ちゃんを受入れられない母親 |
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母に合わせる表の自分をつくる |
母に合わせる赤ちゃんは手のかからない良い子(表の自分)になるが、同時に、本当の自分は母から隠れている。ひきこもりの二つの自分はこうして作られる。
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本当の自分は隠れている |
この子が成長すると、人と親しくなれない潜在的ひきこもりとなる。表の自分はニコニコしているが、ウラの自分は自分を見せると嫌われると緊張している。コミュニケーションできない問題は母子関係から始まる。
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相手に合わせる人間関係、本当の自分は人を恐れている |
ひきこもりセラピーでは母から隠れたウラの自分が出てくるが、その子が「話せない自分」である。何も言えないのは、母親(最初の人間)と絆がないままに成長が止まったからである。話せない自分は守る人がいないので外の世界は危険だと思っている。
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話せない自分とセラピスト |
このメカニズムが分かると潜在的ひきこもりがなぜ以下の問題をもつのかを理解できる。
- 二つの自分(表とウラの自分)がある。
- 本音を言うと人に嫌われる、あるいは人間関係が壊れると思い込んでいる。
- 自己表現をうまくできずに対人関係で緊張する。
- 自分を殺して人に合わせるクセがある(人に嫌われるのが恐い)
- 物事を決められない(外の世界や新しい体験を怖がる)。
ひきこもりは母に受入れてもらえないために発生する病気である。社会的ひきこもりも、潜在的ひきこもりも、すべてのクライアントは母の絆のトラウマをもっている。
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健康な母子関係(左)、ひきこもりの母子関係(右) |
ひきこもりは母から子どもに連鎖する病気である。子どもを受入れられない母親は、実は、自分自身も親から拒絶されたトラウマがある。