2013年2月14日木曜日

激動する日本社会(5)ひきこもりと家族トラウマ(3/3)


匠雅音氏のブックレビュー(最終回):匠氏は、ひきこもりは個人の問題でなく、日本の伝統文化と近代的な自我の衝突であると理解している。


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 衣食足って礼節を知る。豊かになった今、やっと日本人は礼節が語れるようになった。個人の精神活動が問題視されるようになった。心の触れあいがない人間関係は、どんなに経済的に豊かでも不安なのである。触れ合えないくらいなら、いっそ心を閉じるほうが納得できる。おそらく家庭内暴力も、ひきこもりも同根であろう。



http://vimeo.com/29351671



 本書は日本文化に、ひきこもりの原因を求めるが、慧眼だと思う。たとえば少子化についても、誰も本当のことを言わない。わずかに福岡賢正さん等が隠された風景で、真実に目を向けようとするが、多くは見たくないもの、触れたくないものは、この世に存在しないのだ、といった風潮である。真実を口にすることを、和の精神が否定し去ってしまう。
 人口の減少に加えて、経済、教育、政治、社会システムの崩壊が続きます。この崩壊の原因になるのが「システムを変えられない日本」を作る「和の文化」です。和の精神を重んじる日本社会は「自分からは方向を変えられない」という致命的な欠陥をもち、そのために社会崩壊が進んでいきます。しかも、その問題を見ない「臭いものにフタをする習慣」が問題を悪化させています。(中略)
 日本人は、今度は子どもの感情を抑圧する日本的しつけと教育を変えられずに、子どもを病気にしています。P183

ひきこもりに限らず家族問題は、我が国が本当に近代化するための通過儀礼であろう。問題は個人的なことではなく、古い日本的な行動様式と、近代的な自我の衝突である。いわば世代の衝突といっても良い。自浄作用が働かないとしたら、自然淘汰を待つ以外に、方法はないのかも知れない。団塊の世代が死んで初めて、近代的でしやかな自我が誕生するのだろう。

今まで、自分の体験談を語っても、誰も共感してくれなかった。親との抗争では、つねに子供が非難される。だから黙ってきた。しかし本書は、親子問題を精確に捉えていると思ったので、この書評では珍しく自分の体験談を書いてみた。親子間のコミュニケーション確立に失敗すると、愛情欠乏症になり愛情に飢える。親から遠ざかりながら、親の愛情を渇望する。それが実感である。