2013年2月10日日曜日

激動する日本社会(3)ひきこもりと家族トラウマ(1/3)

インターネットの評論家、匠雅音氏が私の「ひきこもりと家族トラウマ』についてブックレビューを書いていた。匠氏はひきこもりと親子のコミュニケーション不在の問題をよく理解している・・・







匠雅音の家族についてのブックレビュー    
ひきこもりと家族トラウマ



著者:服部雄一(はっとり ゆういち)  NHK出版、2005年  ¥660-


 <ひきこもり>は100万人いると推定される。また、ひきこもりは我が国に特有の現象であり、外国では例がないといわれる。本当だろうか。いままで、ひきこもりに関して、納得できる説明に出会わなかった。しかし、本書の主張は、信じても良いように感じる。

 ひきこもりの原因は、親子関係のコミュニケーション不存在だ、と本書はいう。親が生身で子供と向き合わず、親としての役割を演じるだけである場合、子供が良い子を演じる限界を超えたとき、子供はひきこもるのだという。精確な認識だと思う。
ひきこもり現象が生じる前の時代にも、親子関係にコミュニケーションはなかった。しかし、貧しかったので、それが顕在化しなかっただけだというのも納得である。


団塊の世代である私も、実は親子関係では悩んできた。本書が書くような、夫婦仲のきわめて悪い両親に育てられた。しかも、父親は仕事熱心で、経済的な成功を成し遂げたが、子供とはまったく没交渉だった。子供に対しては、命令するときか、叱るとき以外は口をきかず、口答えしようものなら、「誰に食わせてもらっているのだ」という言葉が返ってきた。
商売で成功した父親は、家庭内では暴君だった。が、家庭の外に対しては、気持ち悪いほどに如才なかった。家族の誰かが、よその人と対立すると、父親は必ずよその人の味方になった。親は子供を守り、かばってくれる存在だとは、夢つゆ思っていなかった。父親は自分のメンツのために、子供を養育していたように感じていた。そのため、私は父親に養育費の出資者として以外には、信頼というものを持たなかった。親の経済的な庇護の元から、一刻もはやく脱出したかった。小学生の時から、父親からの独立だけを考えてきた。
 
 私のクライアントに限って言えば、ひきこもりの家庭は中流以上、親は社会的地位が比較的高く、経済的に困窮している家庭はほとんど見られません。離婚は国民平均(25パーセント)より少ない(6パーセント)が、夫婦仲が良くない(86パーセント)のが特徴です。
 ひきこもりは両親の冷たい夫婦関係についてよく語ります。こうした家庭は子どもが親に安心して甘えられる状況ではありません。親は何のために結婚しているのか分からない、親同士でもあまり会話がない、うちは仮面家族だったとは、クライアントがよく口にする表現です。
 一方で、持ち家が多く、子どもには小さい頃から個室を与え、教育にも金と時間をかける家庭が多いのが特徴です。親にはアルコール依存症の問題はありません。しかし、ほとんどの親がワーカホリック(仕事中毒)です。大雑把に言えば、父親は仕事人間、母親は専業主婦で教育熱心という図式が浮かんできます。一般的に言うと、ひきこもりの親は世間体にこだわり、子どもを甘やかすことを悪いと考える真面目な親のイメージが浮かびます。P16

 小さな頃の私の境遇も、本書がいう状況そのものだった。その上、母親は夫である父親におびえ、家付き娘であるにもかかわらず、まともに反論できなかった。裕福であるがゆえに、子供に贅沢な環境を与えているので、世間の人は父親を褒め、悪いのは子供だと思いたがる。私の場合は、血縁のない祖母が同居しており、彼女が愛情を注いでくれたので、辛うじて自立できたように思う。