2013年2月5日火曜日

リムジンバスの中で

2月3日、成田空港に到着。川越へのリムジンバスの中、隣の席に若いお母さんとよちよち歩きの赤ちゃんが座る。

バスの中の赤ちゃんは、泣いたり、騒いだりする。周りのメイワクを心配するお母さんは必死の世話。おむつを変えたり、哺乳瓶を口にいれるが、赤ちゃんの機嫌は治らない。

赤ちゃんはやがて、私が見ているのに気づき、じっと見るようになった。それは、写真のように、大人を見つめる赤ちゃん特有の視線である。赤ちゃんは私に見られているのに気づくと大人しくなった。赤ちゃんは関心が欲しかったのだ・・・



白い背景で隔離面白い幸せな赤ちゃん ストックフォト - 8464478
http://jp.123rf.com/photo_8464478_funny-happy-baby-boy-isolated-on-white-background.html



しかし、お母さんは子どもの気持ちが分からないようだった。赤ちゃんにむりやり外の景色を見せたり、ぬいぐるみと遊ばせようとした。赤ちゃんが、お母さんがメールを見ている携帯に触ろうとすると、「ダメって言ったでしょ」とポケットに入れた。

お母さんは赤ちゃんの目を見なかった。赤ちゃんがチラと見る度に母親は視線を避けるのである。そんな時、赤ちゃんは私の方を見て、私たちはお互いに見つめあった。私は赤ちゃんが拒絶を感じているのが分かった・・・

母親に理解されない赤ちゃんはイライラして、お母さんは思い通りにならない子にイライラする・・・

その時、私はひきこもりクライアントの言葉を思い出した。「母は僕の目を見なかった」、「母は私が邪魔だったんです。ワガママ言う度にムシしました」、「母が私の気持ちを理解する能力はなかった」である。

バスの中のお母さんを観察すると、子どもがひきこもりになるプロセスを理解することができた。お母さんは、哺乳瓶を落とさないように注意するが赤ちゃんの目は見ない、赤ちゃんが何か求める度にムシする、母の関心を求める赤ちゃんにオモチャや他の気晴らしを与えて独りで遊ばせようとする。一言でいうと、お母さんは赤ちゃんと関わろうとしないのだ。

母に関心を持たれない赤ちゃんはもうすぐ感情表現を止めるだろう。そして、生きるために、母(人)に合わせた自分を形成する。それは自分を殺して生きるひきこもり生活の始まりである・・・

赤ちゃんを見ながら、私は心の中でつぶやいた。赤ちゃん、諦めないで。あなたを理解できる人はいるんだよと・・・