2013年6月21日金曜日

ひきこもり発生のプロセス(8)子どもへの嫉妬

M子が産まれた時にK子さんの両親は大喜び。マンションにひんぱんに来るようになった。父は、M子を抱き上げると、「M子、M子」と言いながら、目を細めてあやしてくれる。K子さんはこんなやさしい父の姿を見た事がなかった。

母はM子を上手に抱きかかえると一杯話しかけた。母はM子の気持が分かるのだろうか、赤ちゃんの目をじっと見つめながら満足そうだった。二人はお互いに理解しているように見えた。こういうのを至福の時と言うのだろうか・・・

父親はいつもL男のオモチャを買ってきた。父が箱から小さな自動車を出すと、L男はうれしそうに床の上で転がし、父と母は孫が遊ぶ姿を楽しそうに見ている・・・

両親がM子やL男を可愛がる姿を見ていると、K子さんは複雑な気持になる。私はこんなに可愛がられたろうか・・・

M子は私よりも可愛いのか、L男は私よりも大切なのか、そんなしっとの気持がわいてくる・・・

L男を出産した時に周りの人たちは「跡継ぎを産んだ嫁」として誉めてくれた。しかし、女であるM子の出産は誰も誉めてくれない。夫はK子さんにねぎらいの言葉もかけてくれなかった。周りの関心は赤ちゃんのM子に集中するだけである。

私はどうなるの!子どもを産めば私はどうでもいいの!誰も私に興味がないの!そんな怒りが湧いてくる・・・





K子さんは子供たちに嫉妬していた。誰も私を評価してくれない、誰も私を愛さない、皆はなんで子どもばかり可愛がるのか・・・

K子さんが夕方、一人でイライラしながら、M子のおむつを替えている時である。L男が後ろから抱きついてくるので、K子さんは振り向いて「邪魔よ!あっちへ行って」と叫んだ。

K子さんの顔は鬼の様であった。3才のL男は母に殺されると感じた・・・

K子さんは子どもと一緒にいて孤独だった。子どもはうっとおしいし、何を考えてるか分からないし、手のかかる人形にすぎない。だから、子どもが逆らったり、言う事を聞かないとイライラする。

それだけではない。K子さんは、自分は子どもを愛せないダメな母親、親に愛されない娘、何をやってもうまく出来ない妻として自分を責めていた。

夫とはコミュニケーションがなく、親には気持を分かってもらえず、子どもの世話に追われるK子さん。日ごとに孤独感が強くなる。でも、誰にも話せないのでガマンするしかなかった。